振り返ってみた不安と反省。そして今後の対策と対応はどうする?
今回はE-1サッカー選手権2019(東アジア選手権)の森保ジャパンの香港戦、韓国戦について振り返っていきます。
香港戦
サッカーの東アジアE-1選手権第3日は14日、韓国・釜山で行われ、3大会ぶりの優勝を目指す男子の日本は香港に5―0で大勝した。
2連勝で勝ち点6。
中国との第1戦から先発全員を入れ替え、3-4-2-1システムでゴールキーパーは大迫、センターバックは左から古賀、田中(駿)、渡辺でダブルボランチには、田中(碧)と大島、2シャドウに左は田川右に仲川。
ウイングバックは右に相馬、左に菅。
ワントップには小川という布陣となりました。
東京オリンピック世代に大島僚太選手と仲川輝人選手を加えた布陣となっています。
大島僚太選手に関しては オーバーエイジでの東京オリンピックの候補であることが伺えます。
かわいそうだったのか仲川輝人選手で3-4-2-1システムにはハマるポジションがなかったが Jリーグ MVP なので使わざるを得なかったという起用だったと思います。
香港代表はシステムは4-2-3-1だと思います。
3センターバックに対してプレッシャーが甘いのでウイメングバックまで、簡単にボールを繋ぐことができました。
香港代表はボランチのコースをケアしていましたが 大島僚太選手と田中碧選手の立ち位置がよく判断も早いため、ボランチを経由したビルドアップが簡単に行えたためウィングバックまでボールを前進させることは問題ありませんでした。
右サイドに関しては仲川輝人選手のマークがきつかったため、 ウイングバックの相馬勇紀選手のところで1対1ができていて常にドリブル突破でクロスまで行くことができていました。
相馬勇紀選手が一枚剥がすことで 香港のディフェンスラインはスライドを余儀なくされるので大外で菅大輝選手がフリーになるという状況。
菅大輝選手のファーサイドからの 豪快なボレーシュートを皮切りに 5対0で完勝を収めています。
Jリーグ MVPとして注目された仲川輝人選手ですが右サイドの相馬勇紀選手が 常にドリブルの1対1で勝てていたため得意の右サイドでプレーする必要がなくなり 中央のポジションで窮屈にプレーしていたように見えますが相手のマークをひきつけ、 チームとして必要な役割を考えて貢献していたように思います。
4バックでプレーする時には右サイドハーフが得意ポジションですから、 今回のチームに対して献身的な姿は次につながったのではないでしょうか。
また存在感を発揮したのがハットトリックを決めた小川航基選手!
東京オリンピック世代のエースとして早くから注目されていたもののU20w杯で前十字靭帯を切ってしまい本調子が戻ってこない状態が続いていましたがここへきてようやくエースが帰ってきたという感じでしょう。
ポストプレーが上手いセンターフォワードタイプで3-4-2-1システムを使う以上はシャドーストライカータイプの上田綺世選手よりも適任ではないかと思います。
また、大島僚太選手は中盤の王様として君臨。
安定したゲームメイクと決定的なラストパスで今後、柴崎岳選手の序列を崩す可能性を感じました。
怪我さえなければ、A代表でもその能力は非凡。
また、この試合のサプライズは、センターバック中央の田中駿太選手。
大阪体育大学四年生で来シーズンは北海道コンサドーレ札幌に内定していますが、Jリーグの実績は皆無。
安定したビルドアップ能力とパススピードの早さがあり、的確にボールを散らしていました。
後半からは本職のボランチに入りましたが、田川亨介選手に決定的なスルーパスを通し、中盤のポジショニングも安定。
守備の機会が少なかったので、まだ判断はできませんが186cmの大型ボランチで長谷部誠選手タイプとして大きなポテンシャルがあります。
まだ線が細いので、プロで身体を鍛え上げてフィジカルコンタクト、プレースピードに慣れていくと本物のA代表に入るチャンスもあると思います。
大勝となりましたが香港代表のレベルはオリンピック代表世代の強化試合としても物足りないもので、 この試合で活躍した選手は次の韓国代表戦で何ができるかによって今後東京オリンピックやA代表に入っていけるかどうかを見極められることになるでしょう。
韓国戦
日本は中3日、韓国は中2日で得失点差でも優位に立ち2勝同士で引き分けでも優勝が決まる状況で迎えた日韓戦。
韓国代表はシステムは4-3-3。
ポルトガル人のベント監督はポジショナルプレーと呼ばれるマンチェスターシティが行っているような戦術を韓国代表にかなりの精度で落とし込んでいます。
ポジショナルプレーとは動的にポジションの動き方をあらかじめ決めておく戦術といえます。
森保ジャパンはこのポジショナルプレーが大の苦手で、同じタイプのベネズエラ代表、カタール代表に完敗しています。
Jリーグでは横浜Fマリノスが代表的なポジショナルプレーのクラブで今シーズン優勝しており、日本サッカー界はポジショナルプレーへの対抗策が確立していないのが現状。
森保ジャパンの今後の課題の一つであるポジショナルプレーへの対応についてどこまで改善しているのかを見る絶好の機会でした。
システムは3-6-1でゴールキーパー中村、センターバックは右から畠中、三浦、佐々木。
ダブルボランチは井手口、田中碧。
両ウイングバックは右に橋岡、左に遠藤。
ツーシャドーは左に森島、右に鈴木武蔵でワントップが上田という布陣。
韓国は立ち上がりからディフェンスライン、ウイングが大きく開いてリスクを負ってワイドを大きく使ってボールを保持。
日本は積極的に前線からプレッシャーをかけずに引いて守ってカウンター狙いのような立ち上がりでした。
韓国はキッカーが素晴らしく、セットプレーからチャンスを量産して前半30分に先制すると日本代表はようやく前からプレッシングをかけ始めます。
しかし、ディフェンスラインが低いままでセカンドボールの拾いあいで負けてしまい劣勢のまま前半終了。
全体的にボール保持時に持ちあがる意識が希薄だったためマークを見られている選手にパスを見つけられてしまうためにボールロストが多かったですね。
両ウイングバックと左右のセンターバックは思い切って高い位置にボール保持時に上がることがこのシステムを機能させるうえで必要です。
前半は上田絢世選手の裏抜けと鈴木武蔵選手の身体能力が単体でチャンスにつながりましたが、チームとしての攻撃の形はほとんどありませんでした。
後半は韓国代表が先制したことと前半に体力を消耗したことでペースが落ちて、日本もある程度チャンスが作ることができるようになりましたが、前線からのプレッシングは、最後までハマることなく、攻撃から守備への切り替えの際への備えができておらず、カウンターアタックから多くのチャンスを作られました。
ビルドアップの問題は大島僚太選手の個人能力で誤魔化すことができましたが、決定機を作るまでには至らず1-0で終了。
点差以上に完敗だったと思います。
まとめ
海外組不在の急造チームで、3-6-1システムと多くの若手選手を抜擢した日本代表は韓国戦では戦術的な完成度の低さ、スカウティングの甘さが露呈し、またしても苦手のポジショナルプレー対策は見えてこない物足りない出来でした。
堂安律選手から森保監督のマネジメントについて「選手がミーティングで戦術的なことを決めて最終確認を森保さんがやる」という趣旨の発言がありました。
おそらく、選手の自主的な判断力を養うために、集まる時間の無い代表チームでは、細かく戦術的な決めごとを監督からは作らないで、選手から出てくるのを待つというスタイルで、JFAの方針も同様なのでしょう。
森保監督の現在のミッションは「代表選手の育成」でありチームの完成はカタールワールドカップ前なのでしょう。
ハリルホジッチ監督と同様に手の内は晒さないタイプですね。
そのため、現時点で戦術的な粗さを指摘しても仕方がない部分はありますが、一向にチームとしての成長が見えてこないのは不安ですね。