なでしこJAPANは1勝1分1敗の勝ち点4でグループステージを2位通過!で決勝トーナメント進出を決めました。
世界ランキング7位で前回大会ファイナリスト、前々回大会チャンピオンとしては物足りない結果と内容でしたが、若い世代が多く世代交代の最中で厳しい戦いとなることは想定内ともいえます。
そこで、決勝トーナメントの見方を多様にするためや大会の総括が結果論に流されないようにするために、グループステージの3試合を振り返ります!
最後までご覧ください!
vs アルゼンチン
初戦のアルゼンチン戦(FIFAランキング37位)では、守備を固める相手を崩し切れずにスコアレスドロー。
なでしこジャパンの課題として
・ショートパス主体の攻撃ではこじ開けられない
・裏のスペースへの飛び出しの意識
・カウンターリスク管理が不十分
の3つが如実に出た試合でした。
アルゼンチンは小柄でテクニックに優れるという共通点があり、狭いスペースでの対人プレーにことごとく負け続けた点も攻めあぐねた要因でした。
良かったところをみつけるのが難しい試合をきっかけにチームは大きな変化を遂げていきます。
vs スコットランド
第2戦のスコットランド戦(FIFAランキング20位)は2-1で勝利。
初戦とは打って変わって、ショートパスでの崩し、ポゼッションをある程度捨てて背後のスペースをダイレクトに狙い相手を背走させて、クリアボールを豊富な運動量を活かして拾い2次攻撃、3次攻撃に繋げるショートカウンター型のチームに変貌。
「無理に繋がなくても良い」という監督の方針転換があったのは明白で、選手は養成ギプスが取れたように躍動し後半20分までは完璧な試合をみせます。
試合終盤になるとスコットランドがロングボールを多用したこととなでしこジャパンの運動量が低下、選手交代で守備のバランスが崩れたことをきっかけにして攻め込まれたもののなんとか逃げ切り勝利。
左サイドハーフで起用された19歳の遠藤純選手、怪我から復帰した岩渕真奈選手のパフォーマンスは際立っていて、今大会の基本的なスタイルや布陣が固まった試合となりました。
vs イングランド
第3試合のイングランド戦(FIFAランキング3位)では優勝候補と対戦。
0-2で敗戦しています。
身体能力の高さに加えてハイプレッシャーとビルドアップ能力に磨きをかけたイングランドが前半は圧倒して0-1で折り返します。
後半は打って変わってなでしこジャパンペース、一方的に攻めるもののカウンターから失点を献上。
決定力不足も露呈して力の差を見せつけられました。
しかし、けが人のパフォーマンスが向上し、若手選手は自信を付けていて、なにより優勝候補を相手に経験値を積めたことは決勝トーナメントで大きな意味を持つでしょう。
元の姿を取り戻しつつあるなでしこJAPAN
前体制の佐々木監督時代の反省も踏まえて、ポゼッションスタイルを極めていく方向性で高倉体制が発足しましたが、アルゼンチン戦の体たらくで路線変更。
佐々木体制以前からのなでしこジャパンのスタイルであるハードワークを基本とした堅守速攻型に帰りました。
これまでのテストマッチは何だったんだ?という批判もありましたが、高倉監督からすると、この戦い方は元々出来るので、別のアプローチを試していたということでしょう。
結局はなでしこジャパンといえばこのスタイルという戦い方になってきました。
ただし、8年前のワールドカップ優勝チームと違うところは宮間あや選手のセットプレーと澤穂希選手の大舞台での異常な得点力という武器が無いことです。
耐えて少ないチャンスをものにするスタイルには決定機で仕事をする選手が必要ですが、まだどの選手も物足りないですね。
そして、佐々木監督の時代と比較すると守備戦術がなでしこジャパンは変わらないですが、他のチームは攻撃戦術が大きく向上しているので対応策を早く打ち出してほしいですね。
4-4-2システムの泣き所を論理的に狙われていて、なにも対応できていないのが現状です。
他チームは攻撃戦術が向上した一方で個人で打開する力が落ちていると感じることもあってこの点でなでしこジャパンは戦いやすくなっています。
そのために守備戦術の向上があれば優勝も狙えると思うのですが・・・。
いずれにしても初の女性監督の誕生は意義深いですし、監督の成長もなでしこジャパンの躍進のキーポイントです。
鍵を握るVAR
記憶は美化されるもので、華麗なパスワークで優勝したと思われがちな8年前の大会ですが、今見ると圧倒されながらもセットプレーで少ないチャンスをものにした大会でした。
今大会もその路線にシフトしているのは好材料ですが、ルール変更がなでしこジャパンを阻む可能性があります。
なでしこジャパンの生命線はシュートブロックです。
なでしこジャパンの特徴である小さい身体の利点としてドリブル、パスで揺さぶられても、ステップを踏みかえて身体を投げ出しやすいわけですが、シュートブロックの際に手に当たってPKというシーンがVAR(ビデオアシスタントレフェリー)導入後には増えていて、厳密にルールが適用されるようになったことでガムシャラなシュートブロックが仇となる可能性が増えていて注意が必要ですね。
長谷川唯
高倉体制のポゼッションスタイルで中心となっていた長谷川唯選手は路線変更のあおりをうけて出番が減っています。
スルーパスのセンス、テクニック、視野の広さを誇る新司令塔は今大会の顔として注目されていましたが、ベンチを温める日々が続いています。
年下の19歳の遠藤純選手が台頭してポジションを失ったことは本人にとってはショックでしょう。
決勝トーナメントでは相手の足が止まり、中盤にスペースが出来てくる後半途中から投入されると良さを発揮しやすいと思うので、スーパーサブとして活躍に期待したいですね。
杉田妃和
U17、U20ワールドカップでMVPを獲得した杉田妃和選手は今大会注目の若手選手です。
試合を重ねるごとに運動量、攻撃への積極性が高まっていて、チームの軸としての貫禄すら感じるようになってきました。
ダブルボランチの相方である三浦成美選手とのバランスも抜群で、後方待機、ワンタッチパスの三浦選手と前方に飛び出しキープ力に優れる杉田選手の相互補完的な関係性はなでしこジャパンを今後10年支えるかもしれません。
パスセンス、ドリブルテクニック、ポジショニングセンスに優れますが、得点に直結した活躍がこれまでにないのも事実。
自信と余裕が出てきているので、育成年代で見せていた天才性がワールドカップで発揮される日も近いかもしれません。
なでしこジャパンが優勝するならこの選手が殻を破る必要があるでしょう。
最後に
いかがででしたか?
今回は「なでしこジャパン決勝トーナメント決定!グループステージを振り返る」で、
決勝トーナメント進出を果たしたなでしこジャパンについてまとめてみました。
理想主義、放任主義で選手任せといわれる高倉監督ですが、本大会に入ってからはリアリストな一面をのぞかせています。
優勝するためには監督の采配で勝つ試合は1試合はあるものですから、それが出来る人材なのかお手並み拝見といったところですね。
さんざん批判されていた放任主義ですが、選手の判断で戦い方を大きく変えることができるのはメリットですから、グループステージの経験を活かしてチームを大会中に固めていくことが出来ると優勝もあり得ないことはないです。