J1の各クラブのオフシーズンからキャンプの状況を紹介します。
補強状況から、新戦術までシーズン前の情報をまとめました。(その2)。
今回はサンフレッチェ広島、横浜Fマリノス、清水エスパルス、大分トリニータ、ベガルタ仙台です。
サンフレッチェ広島
昨シーズンは6位で、予算規模は10番目程度であることを考えると、上位をキープして好成績だったといえるでしょう。
城福体制3年目となる今年はリーグ2番目に少なかった失点数を維持しながら、得点力を上げていくことがテーマとなります。
守備時に5-4-1で低いブロックを組む守備的な布陣なので、得点力を上げるには攻撃陣の個人能力に頼らざるをえないでしょう。
昨シーズン中心選手として活躍したセンターフォワードのドウグラス・ヴィエイラ選手、左シャドーの森島司選手はチャンスメイクに優れるものの得点力はそれほどでもないタイプ。
そこで、右シャドーの得点力のある選手が補強ポイントだったと思います。
21歳のブラジル人エゼキエウ選手が新加入ですが、実績は未知数な選手ですね。
また、昨シーズンレギュラークラスのボランチ稲垣選手が名古屋グランパスに移籍していますが、穴埋めの補強はしていません。
若手の松本泰志選手、怪我から本格復帰が期待される青山敏弘選手で穴は埋まるという判断でしょう。
サンフレッチェ広島は育成型クラブなので、補強は物足りない程度で丁度良いと考えることもできます。
経営的にも新スタジアム計画が進んでいて、このクラブはスタジアムが完成するまでJ2に落ちないことが当面の目標。
タイトルを狙いに行くのは、その後ですから若手育成路線でうまくやっていることは素晴らしいと思います。
資金力がないことを理由に若手育成を掲げるチームは多いですが、上手くいかずに成績不振を若手選手のせいにするチームが多い中で、サンフレッチェ広島は育成と結果が常に伴っている理想的な若手育成型クラブですね。
今シーズンも手堅く結果を出してくるでしょう。
横浜Fマリノス
昨シーズンは優勝という素晴らしい結果を出したもののポステコグルー監督の中では、とくに後半戦は理想を妥協して結果を取りに行ったシーズンだったと思います。
夏に三好康児選手が海外移籍してからは、ライン間でボールを受けることができるキープレーヤーを失って4-2-3-1にシステム変更。
両サイドの縦の突破力を活かしたサッカーになっています。
縦に速く攻撃できるようになった一方でゲームコントロール力は失われていました。
今シーズンは、各チームがマリノス対策をしてくるうえに左ウイングで後半戦のキープレーヤーとなったマテウス選手が名古屋グランパスにレンタルバックでいなくなります。
そのため、昨季終盤のウイングの突破力を活かしたサッカーと元々目指していたポゼッションでゲームの主導権を握りパスワークから崩すスタイルを使い分けることが、アジアチャンピョンズリーグと並行して戦ううえでも課題となるでしょう。
新加入の水沼宏太選手、仙頭啓也選手は三好選手、マテウス選手と比較するとパワーダウンは否めません。
また、昨シーズン二桁得点のオナイウ阿道選手が補強の目玉ですが、エジガルジュニオ選手、エリキ選手がいて過剰人員気味ですが、エリキ選手をウイングで考えているのでしょう。
このあたりの選手のやりくりは難しいですね。
理由はJリーグは外国人枠は5人ですが、アジアチャンピョンズリーグでは3+アジア枠1となること。
エリキ選手、エジガルジュニオ選手、チアゴマルチンス選手で外国人枠が3。ティーラトン選手と朴一圭選手でアジア枠が2となるので一人は出場できません。
Jリーグだとティーラトン選手は提携国枠で朴選手は在日外国人枠で外国人枠には該当しませんから、Jリーグだけを考えるともう二人外国籍枠がありますが、アジアチャンピョンズリーグでは起用できません。
これが、マテウス選手放出の一つの理由ですし、外国籍選手獲得が0の理由でもあります。
J2レノファ山口から万能型の前貴之選手も加入していますが、他の獲得選手も日本人選手の万能型で複数ポジションでプレーできる選手でアジアチャンピョンズリーグを意識した編成となっています。
というわけで、マテウス選手、三好選手の代わりが獲得できず、フォワードはいびつな外国人枠の関係で過剰人員になっているのが、連覇への不安要素ですね。
また、ヘッドコーチのクラモフスキー氏が清水エスパルスの監督に就任したことの影響もあるでしょうし、雲行きは怪しいです。
清水エスパルス
昨シーズンは、序盤はドウグラス選手が不整脈で離脱。
後半戦は北川航也選手が海外移籍とダブルエースが抜けながらも12位で残留して地力をみせました。
横浜Fマリノスからポステコグルー監督の右腕ヘッドコーチのクラモフスキー氏を引き抜いて監督に据えて、マンチェスターシティと提携する横浜Fマリノスの戦術を間接的に吸収する戦略ですね。
また、上手いと感じたのは昨シーズン途中から指揮を執ってチームを残留させた篠田監督をコーチとして残留させたことです。
クラモフスキー氏は監督としての経験がないので、篠田コーチがチームマネジメントで好影響を発揮するでしょう。
戦術クラモフスキー、統率篠田という2頭体制ですね。
北海道コンサドーレ札幌も攻撃ミシャ、分析四方田と前監督をコーチにして2頭体制で成功していますので、面白い人事ですね。
ただ、エースのドウグラス選手がヴィッセル神戸に移籍した穴は大きく、監督はシステムを4-3-3にすると明言しましたが、3トップのウインガータイプが不在。
センターフォワードタイプは35歳鄭大世選手と18歳栗原イブラヒムジュニア選手で得点力の計算があまりできません。
というわけ、監督のやりたいサッカーと持っている駒が違い過ぎるので、今シーズンは種まきと割り切って残留が目標でも良いと思います。
横浜Fマリノスもシティグループと提携してから5年目にして結果が出ましたので、清水エスパルスも時間はかかるでしょう。
大分トリニータ
J1に昇格して予算規模最下位だった大分トリニータは昨シーズン9位と躍進。
原動力となったのは片野坂監督が就任3年で作り上げた完成度の高い戦術と組織的なサッカーでした。
片野坂監督はサンフレッチェ広島時代、森保一監督のコーチで日本サッカー協会からコーチとして打診を受けていましたが、大分トリニータに残留しました。
監督が残った一方で、昨シーズン前半戦のエースストライカー藤本憲明選手はヴィッセル神戸へ、後半戦のエースストライカーとなったオナイウ阿道選手は横浜Fマリノスへ移籍。
代わりに知念慶選手、渡大生選手を加え、チャンスメーカーとして町田也真人選手、野村直輝選手を獲得しました。
前線の選手以外は主力クラスは残留しており、今シーズンも片野坂監督のサッカーを継続できそうです。
予算が少ないのに選手が残るのは、プレーしていて面白いからでしょうね。
一つ不安点があるなら絶対的なストライカーがいないことです。
知念選手と渡選手は良い選手ですが、シーズン通して得点を取り続けた経験はありません。
良いサッカーをしても決定機で決められず結果が出なければ、特殊なチームスタイルに対して選手は不安になり、悪循環に陥ると降格もあるかもしれません。
ベガルタ仙台
昨シーズンは、主力の大量流出で前半戦は不調でしたが、後半戦は盛り返して11位で残留を果しています。
しかし、渡辺監督は主導権を握るスタイルを目指す監督であり、後半戦に守備的にシステムチェンジしての残留は、不本意だったかもしれません。
今季の監督はモンテディオ山形で昨シーズン好成績を出した木山監督で、守備的なサッカーで低予算でも勝ち点が計算できるコストパフォーマンスが高いサッカーをするタイプ。
フロントの姿勢とも一致している監督人事ですが、100万人都市の仙台で素晴らしいスタジアムがあるにもかかわらず残留が目標となってしまっている現状は経営陣の問題。
本来はもっと上を目指すことが出来るポテンシャルがあるチームです。
補強については攻撃陣に流出が多かったですが元バルセロナのクエンカ選手を格安で獲得。
フォワードは赤崎秀平選手、ゲデス選手を獲得しました。
昨シーズンリーグアシスト王永戸勝也選手が鹿島アントラーズに移籍して代わりにパラ選手を獲得。
ストライカーに弱冠不安はありますが、穴は埋めており、手堅いチームとなりそうです。