東アジア選手権(E―1選手権)のメンバーと 中国戦を振り返ってみて。
東アジアのライバルがしのぎを削る、EAFF・E-1サッカー選手権2019。
日本は中国との初戦に臨みました。
海外組不在となる今回。
国内組23人で構成されたメンバーは、来年に迫った東京五輪を戦うU-22日本代表世代の選手も数多く顔をそろえました。
一方それ以外の選手にとっては来年3月のワールドカップ・アジア2次予選、ひいては突破後に待っている9月からの最終予選を戦う代表主力勢に割って入っていけるか否か、そのアピール合戦の舞台となります。
Jリーグ最終戦から中二日となる初戦の中国戦には2-1で勝利。
第2戦で香港、第3戦で韓国と対戦します。
国内組の若手主体のメンバーとなった裏事情
韓国・釜山で行われるEAFF E-1選手権は東アジア限定の大会で国際サッカー連盟FIFAの設定する国際Aマッチウイークに開催されるわけではないので海外組を招集する権利をもちません。
しかし、国内組のベストメンバーを呼んだという訳でもありません。
国内組も天皇杯、降格入れ替え戦と日程がバッティングするために鹿島アントラーズ、ヴィッセル神戸、清水エスパルス、Ⅴファーレン長崎、サガン鳥栖、湘南ベルマーレ、浦和レッズからの招集は難しい状況だったからです。
いまやメンバーの8割が海外組となった日本代表にとって海外組抜きでは、個人のテストの場にしかなりません。
そこで、今回のE-1東アジア選手権は来年の東京オリンピックに向けたU22世代から12人を招集。
A代表の大会ですが、U22世代のテストマッチにしたということですね。
また、U22世代の主力クラスも何人か海外組を含めて招集できないので、この世代のメンバーが固まって海外組がよそ者になってしまわないことと、A代表の選手と混ぜることでプレーの基準を引き上げるという狙いも透けて見えます。
このような事情が分かっていると非常にバランス感覚がある選手選考で、このあたりは国内事情をよく分かっている日本人監督で東京オリンピック世代との兼任であるメリットですね。
また、4バックをメインにしているA代表の戦術的なオプションとして森保一監督が得意な3-6-1システムを試すという意味でも有意義な大会としたい思惑が見えますね。
招集された選手は所属クラブで3バックに慣れている選手が多いです。
招集メンバー
▽GK
生年月日:1995.02.27
身長/体重:185cm/82kg
FIFA開催大会出場歴:2018 FIFA World Cup Russia、
Olympic Football Tournament 2016、
FIFA U-17 World Cup 2011
所属:柏レイソル
※初招集(U-22日本代表世代)
生年月日:1997.01.30
身長/体重:183cm/79kg
FIFA開催大会出場歴:FIFA U-20 World Cup Korea Republic 2017
所属:大分トリニータ
生年月日:1999.07.28
身長/体重:186cm/86kg
FIFA開催大会出場歴:
所属:サンフレッチェ広島
▽DF
生年月日:1989.10.02
身長/体重:176cm/70kg
FIFA開催大会出場歴:FIFA Club World Cup Japan 2015
所属:サンフレッチェ広島
※12月7日離脱
生年月日:1995.03.01
身長/体重:183cm/77kg
FIFA開催大会出場歴:
所属:ガンバ大阪
身長/体重:184cm/80kg
FIFA開催大会出場歴:
所属:横浜F・マリノス
※初招集(U-22日本代表世代)
生年月日:1997.02.05
身長/体重:184cm/76kg
FIFA開催大会出場歴:
所属:FC東京
※初招集(U-22日本代表世代)
生年月日:1998.09.10
身長/体重:171cm/69kg
FIFA開催大会出場歴:
所属:北海道コンサドーレ札幌
※初招集(U-22日本代表世代)
生年月日:1998.10.28
身長/体重:182cm/71kg
FIFA開催大会出場歴 :
所属:柏レイソル
※初招集(U-22日本代表世代)
生年月日:1999.05.17
身長/体重:182cm/73kg
FIFA開催大会出場歴:
所属:浦和レッズ
▽MF
※初招集
生年月日:1992.07.27
身長/体重:161cm/57kg
FIFA開催大会出場歴:
所属:横浜F・マリノス
生年月日:1993.01.23
身長/体重:168cm/64kg
FIFA開催大会出場歴:2018 FIFA World Cup Russia、
Olympic Football Tournament 2016
所属:川崎フロンターレ
生年月日:1993.08.16
身長/体重:182cm/74kg
FIFA開催大会出場歴:
所属:FC東京
生年月日:1994.02.11
身長/体重:185cm/75kg
FIFA開催大会出場歴:
所属:北海道コンサドーレ札幌
生年月日:1996.08.23
身長/体重:171cm/69kg
FIFA開催大会出場歴:Olympic Football Tournament 2016
所属:ガンバ大阪
※初招集(U-22日本代表世代)
生年月日:1997.02.25
身長/体重:165cm/68kg
FIFA開催大会出場歴:
所属:鹿島アントラーズ
※初招集(U-22日本代表世代)
生年月日:1997.04.25
身長/体重:175cm/66kg
FIFA開催大会出場歴:
所属:サンフレッチェ広島
※初招集(U-22日本代表世代)
生年月日:1997.05.26
身長/体重:183cm/68kg
FIFA開催大会出場歴:
所属:大阪体育大学学友会サッカー部
※初招集(U-22日本代表世代)
生年月日:1997.11.22
身長/体重:175cm/66kg
FIFA開催大会出場歴:FIFA U-20 World Cup Korea Republic 2017
所属:横浜F・マリノス
※初招集(U-22日本代表世代)
生年月日:1998.09.10
身長/体重:177cm/69kg
FIFA開催大会出場歴:
所属:川崎フロンターレ
▽FW
※初招集(U-22日本代表世代)
生年月日:1997.08.08
身長/体重:186cm/78kg
FIFA開催大会出場歴:FIFA U-20 World Cup Korea Republic 2017
所属:水戸ホーリーホック
※U-22日本代表世代
生年月日:1998.08.28
身長/体重:180cm/72kg
FIFA開催大会出場歴:
所属:鹿島アントラーズ
※初招集(U-22日本代表世代)
生年月日:1999.02.11
身長/体重:181cm/70kg
FIFA開催大会出場歴:FIFA U-20 World Cup Poland 2019
所属:FC東京
あまり聞いたことがない名前が多いと思いますが、以上の理由でフルメンバーからは程遠いメンバーとなっているので仕方がないですね。
森保監督は
「このE-1選手権は東アジアの国々との対戦ということで、国の威信をかけて戦ってきます。対戦国以上に日本のために戦って勝つということ、日本のサッカーを背負って戦い、勝利にこだわることを実践していきたいと思います。実戦をしていくなかで、選手たちがこの厳しい戦いをもって貴重な経験を成長につなげていってほしい。今回のメンバー編成のなかで、U-22しか経験していない選手も多く含まれていますが、まずはこの経験をもってさらに成長してほしいということ。そして経験のある選手は、これからも代表を背負っていくということを自分のプレーで示してもらいながら、若い選手に背中をもって経験を伝えていってもらえたらと思います。結果にこだわりつつ、選手層を厚くすることを考えていきたいです。日本代表の強化として、国内組も海外組もアジアで確実に勝つ力をつけること。世界との戦いの中で、勝っていくためには国内海外問わずすべての選手がレベルアップすることが必要です。11月のベネズエラ戦では、我々にとっては思っていなかったというか、描いていなかった結果となりました。我々を応援してくださるかたにとっても喜べる結果でなかったことは承知しています。足りなかった悔しさを今後の成長につなげていくことが重要です」
とコメントしています。
初戦の中国戦は
2対1で勝利。
中国は直前に元イタリア代表監督のリッピ氏が辞任して、イングランド・プレミアリーグで初めてプレーした中国人監督李鉄氏が就任して直後の試合となりました。
メンバーもサブメンバーが主体で、チーム戦術も浸透しておらず守備のプレッシャーは甘く、攻撃もビルドアップは少し形を作りはじめたという段階で迫力はありませんでした。
システムは4-4-2系ですが、コンパクトにしているわりにボールホルダーへのプレッシャーは緩く、まだまだ未完成のチームという印象でした。
日本代表はシステムは3-6-1。
ゴールキーパーに中村航輔選手。
3バックのリベロはガンバ大阪で同ポジションを務める三浦弦太選手。
左センターバックもサンフレッチェ広島でこのポジションが本職の佐々木翔選手。
右センターバックは、4バックで普段プレーしている横浜Fマリノスの畠中進之介選手。
ボランチは、森保JAPANで常連となった橋本拳人選手とガンバ大阪の井手口陽介選手。
右ウイングバックには、浦和レッズで同ポジションを務める橋岡大樹選手、左ウイングバックは、普段はサイドハーフの横浜Fマリノス遠藤渓太選手。
ツーシャドーはともに所属クラブで同じポジションに慣れているサンフレッチェ広島の森島司選手と北海道コンサドーレ札幌の鈴木武蔵選手。
ワントップは東京オリンピック世代の代表ではおなじみの上田絢世選手となりました。
畠中進之介選手以外は所属クラブか東京オリンピック世代で、このシステムには慣れている選手を配置しています。
日本は、序盤15分は引き気味で試合を進めて相手の出方をうかがいます。
3-6-1は前線からのプレッシャーがかけにくいシステムなので慎重にブロックを作って守っていましたが、ビルドアップが不安定なことを見極めると徐々にプレス位置を高くしていきます。
中国の守備ブロックは横スライドが甘く、素早くサイドに展開するとシステムのミスマッチもあってサイドで数的優位が作りやすい状態でした。
29分、ワントップの上田絢世選手が左サイドに流れて巧みなスイッチパスを森島司選手に送り左サイドを崩すと逆サイドから鈴木武蔵選手トップスピードで突っ込んできて豪快に代表初得点を決めました。
その後は、中国のプレッシャーが甘いこともあって低い位置でゆっくりビルドアップをして、詰まったらゴールキーパーに戻して右サイドの橋岡大樹選手の空中戦で勝負させておけば、カウンターリスクはほぼ無い状態で攻撃を展開していきます。
後方のビルドアップからサイドの高い位置に展開してクロス勝負という攻撃が続き、70分にはコーナーキックから三浦弦太選手が追加点。
中国代表は丁寧にビルドアップして攻撃を組み立てるも5-4-1で守備ブロックを組む日本代表を崩すまでには至らなかったものの、終了間際には右サイドからのアーリークロスで一点を返します。
日本代表は、中盤のプレス強度が甘く、3-6-1の泣き所であるボランチの横のスペースからクロスを上げられ、ペナルティーエリアで人数は足りていましたが、畠中選手がマークを外してしまいました。
試合はそのまま2-1で日本代表が勝利しました。
両チーム即席チームで評価が難しい試合でしたが、まず勝ったことは評価しなければならないでしょう。
そして、3-6-1システムが即席でもそこそこ機能していました。
後方でのボール回しからウイングバックを高い位置に上げて、サイド攻撃でカウンターリスクを減らすのはサンフレッチェ広島でよく見たパターンです。
見ている方は、ディフェンスがボールを回す時間が長くてゴール前の攻防が少なくなる単調な試合ですがのらりくらりと勝つのが森保一監督の持ち味。
左シャドーにパサータイプを置き、右シャドーにフィニッシャーを置いて左でチャンスメイクして右で仕留めるパターンもサンフレッチェ広島でよく見たゴールパターンでしたね。
やはり3-6-1の方が監督はやりやすいのだとうと感じた試合でした。
個人の評価としては、特別悪かった選手もいなかったですし、東京オリンピック世代の森島司選手、遠藤渓太選手、橋岡大樹選手が活躍したのは良かったのではないでしょうか。
とくに森島司選手はA代表で3バックを採用するならメンバー入りしてもおかしくない活躍だったと思います。
次戦の香港戦は、
より若手主体で選手を大幅に入れ替えてくるでしょうし、4バックかな?という気もしますが、この試合も新戦力のテストの域を出ないですし、あまりA代表の進歩を考えるには参考にならないですね。
最終戦の韓国は、
海外組以外はガチメンバーでホームなので雰囲気も違いますから、この試合で活躍した選手が「本当の」A代表に入っていくでしょう。