「新型コロナウイルス感染症の拡大で、われわれは大きな意思決定をしました。明日(26日)開催予定のルヴァン(カップ戦)から3月15日開催予定の Jリーグまでのすべての公式試合を延期することを決定しました。
24日の夜半に『この1~2週間が瀬戸際』という政府専門家会議の発表を受け、25日にクラブ実行委員とのウェブ会議を行い、全会一致で決断しました。ある種の国難ともいえる中、協力していく意思をお伝えします」
2月25日夕方、村井満チェアマンはJ1~J3のリーグ戦、カップ(ルヴァン)戦の全94試合の延期を発表。
Jリーグが自然災害以外で中断するのは初めてで国内主要プロスポーツが新型肺炎の感染拡大による影響で日程変更に踏み切ったのも初めてでした。
東日本大震災の後にもJリーグはいち早く中断を決定して日本代表戦をチャリティーマッチに変更したことがあります。
今回の判断は、Jリーグにとってリスクのある勇気のいる決断でしたが、苦しい台所事情もあります。
個人的な予測では、過去の季節性インフルエンザの流行の季節からみて、すでに収束に向かっており、3月中旬からは、通常通りJリーグが開催できるでしょう。
政府としてもJリーグが口火を切ったことで、イベント開催中止の合図を出してプロ野球の開幕に合わせる日程が都合が良さそうです。
Jリーグの多くのチームが赤字に転じることが確実。
Jリーグクラブライセンス制度では、債務超過に陥ったクラブはJ3降格という厳しい制度がありますが、債務超過ぎりぎりで予算を組んでいるクラブがJ1にもいくつかあります。
サガン鳥栖、湘南ベルマーレ、ベガルタ仙台、北海道コンサドーレ札幌、大分トリニータらは今シーズン終了後に債務超過に陥っても不思議ではない財政状態ですが、救済措置が必要となるでしょうし、Jリーグがこの痛みから抜け出すには数年は必要となるでしょう。
予算に関してはJリーグが特別に総額5億円程度の救済金を用意しているとのことですが、J1からJ3までに配ると雀の涙ほどの金額にしかなりません。
村井チェアマンはこのようにコメントしています。
「Jリーグには『大規模災害時補填規定』というのがあります。
激甚災害によって被害を受けた時に補填するというもので、通常は雷や地震などで中止になった時に適用される。
今回のケースがそれに当たるかは議論が必要だが、現状をしっかり把握して対応したい。
それ以外にも準備金があるので、各クラブの財政的負担にならないような配慮は考えていきます」
と村井チェアマンは説明しています。
Jリーグ日程の消化をするのも困難を極める。
2011年東日本大震災ではワールドカップ、オリンピックと重ならなかったので、1か月程度の休止で済みました。
今回は東京オリンピック開催時期と日程が被ることになるか、かなり無理をしてオリンピック時期とずらして詰め込むかのどちらかの判断となるでしょう。
オリンピックの開催の可否について国際オリンピック委員会(IOC)委員が
「開催可否の判断は5月下旬がリミット」
とコメント。
日本では収束している可能性が高いですが、他の国では感染が続くかどうかの予測は困難です。
結局のところ、海外での感染の度合いによって判断が下され、すべてIOC次第となります。
どちらにしても日本政府に決定権が無いためにオリンピック開催可能性を織り込み済みで日程を組むことは5月まで不可能でしょう。
Jリーグはその判断に振り回されて日程をなんとか消化していくしかありません。
過密日程が成績に及ぼす影響。
今回の新型コロナウイルスによる中止によって、Jリーグの各クラブが影響を受けることをまとめてみました。
これらのことを考慮すると、もともと資金力があるクラブが2020年Jリーグで単純に有利になりそうですが、アジアチャンピョンズリーグに出場する横浜Fマリノス、ヴィッセル神戸、FC東京は日程面での調整が難しくなるでしょう。
とくにFC東京は地元開催の東京オリンピック開催時期に試合をホームで消化することは無理筋。
新型コロナウイルス中断期間とアジアチャンピョンズリーグと東京オリンピックという日程的な難しさがトリプルパンチで襲ってくるでしょう。
Jリーグとしては今回休止となった94試合をどこに組み込むかは、予定通りなら今年は7月24日~8月9日まで東京五輪が開催されるため、7月4~5日の週末でいったんリーグ戦を休止し、8月14~16日の週末にリーグ戦を再開するという変則スケジュールになっていて1か月間の中断期間を挟む予定でしたが、この期間に試合を組むことが認められるのであれば、日程的な調整は難しくないです。
しかし、村井チェアマンは
「この期間は東京五輪に協力して試合は開催しない」
とコメントしているので、望み薄となります。
これから方針転換する可能性がありますが、基本的には過密日程は避けられないとみて間違いなさそうです。
日本の感染者の傾向から見えてくるのは希望。
2月26日で日本全体で特に新型コロナウイルスに新規感染者が多いのは北海道で、毎日10人近くが新たに感染しています。
次に東京都、愛知県が続いていますが、愛知県は検査数が全国で飛び抜けて多く、自治体がより多くの感染者を追跡することができているからと見ることができますし、東京は人口が多いという理由が見えてきます。
このように考えると北海道以外は、異変は起きているとは言い難いです。
北海道だけでリスクが高いのは、外国人観光客が多かったことと、気温が低いことが理由として挙げられるでしょう。
東京や神奈川も新たな感染者が発生していますが、愛知県を境に関西より西では2月22日の和歌山を最後に発生していません。
九州や沖縄は中国からの観光客が多く、感染ルートが外国からの感染者が見つかりましたが、地域内での拡大は発生していません。
このように南や西の地域では地域内での感染拡大が見られず、北海道では爆発的に増加していることから考えても、気温と感染リスクは反比例していくものとの予測が付きます。
最近の気温は沖縄は最低12度から最高24度、福岡は2度から18度でした。
大阪は2度から15度、名古屋も同じで東京は4度から18度、札幌はマイナス5度からプラス5度でした。
このことから考えても北海道でこのまま何も起きなければ日本は気温が上がってくればリスクが下がっていることが、いずれ目に見える形で表れてくるだろうと思います。
インフルエンザなど多くのウイルスは気温が低い時期に流行し、気温が上昇すると沈静化するパターンがありますが、例年通りの傾向をたどるなら、インフルエンザは2月までがピークだと多くの方は認識しているでしょうし、新型コロナウイルスも2月26日の現在はピークを迎えているかもしくは通り抜けた可能性が高いですね。
北海道だけは、3月まで安心できないと思いますが、小中学校を休校するなど感染拡大のリスクに備えていますので、妥当な対策はとれていますし、北海道でも5月にインフルエンザになる人はあまり聞いたことがありませんから、IOCが開催の可否を判断するといった5月にはこのまま何もなければ、日本では沈静化していく可能性が高いです。
Jリーグに関しても選手やスタッフに感染者が見られなければ、北海道コンサドーレ札幌以外は延期期間を経てから試合開催は可能でしょう。