FCバルセロナのキケ・セティエン監督は本来のバルセロナを取り戻すことができるのか?
リーガエスパニョーラで首位であるにも関わらず、バルベルデ監督解任に踏み切ったFCバルセロナ。
バルベルデ監督はチャンピョンズリーグ2年連続敗退ですが、リーガエスパニョーラでは良い結果を残していただけにこの解任劇は意外でした。
新監督のキケ・セティエン監督は、バルセロナの代名詞となったポゼッションサッカーを展開し、下部組織出身の選手を積極的に起用したので、最初こそ評価されましたが、リーガ・エスパニョーラ第26節レアルマドリードとのクラシコで4年ぶりの敗戦。
風当たりが強まっていきそうです。
[なぜ監督解任が必要だったのか]
バルベルデ監督は調整役タイプの監督で、ピケ選手、メッシ選手、ブスケツ選手など黄金期を支えたベテラン選手が主導権を握っているチームでは、ベテランに対して強烈なリーダーシップを発揮することは期待できず、守備をしないメッシ選手のための変則システムを使用しながらバランスを取ってきましたが、その無難なサッカーに辟易していたファンは多いでしょう。
そこで、黄金期のようなボール保持を軸としたサッカーを求めるファンが多くなっていました。
バルベルデ監督は戦術よりも選手ありきでチームを組み立てますし、中心選手に依存したチームとなり、華麗なサッカーというよりは、個人能力任せな部分が大きくなっていたというのが、バルベルデ監督を交代させた理由でしょう。
また、バルセロナは会長をファンが投票で決めるソシオ制なので、ファンに会長は支持される必要があります。
ファンが求めているのは、グアルディオラ監督が率いた10年前をもう一度なので、その夢を見せてくれない無難なバルベルデ監督のサッカーは、たとえ結果が出ていても受け入れ難いファンが多かったのだと思います。
[キケ・セティエン監督は適任だったのか?]
ファンが望んでいることと、クラブの方針は10年前の黄金期をもう一度でしょう。
しかし、10年前のバルセロナは・下部組織から一貫したサッカーを体現していた・才能豊かな若手の下部組織出身選手がいたという点で現在のチームとは、異なる環境にあります。
いくら、ファンが下部組織出身の選手を起用するように求めても、タレントがいないのであれば、それはここ10年間の育成に問題があったということになりますし、新監督にその問題を解決させることは、無理です。
キケ・セティエン監督は、リキ・プッチ選手、ファティ選手など下部組織出身の若手選手を積極的に起用していますが、メッシ選手を超えるような逸材がいないのは確かです。
また、キケ・セティエン監督のサッカーが下部組織から一貫したバルセロナの哲学を体現しているのかも非常に怪しいです。
キケ・セティエン監督はバルセロナと関係のないキャリアを積んでいます。
たとえ、ボール保持を軸としたスタイルが似ていても、似て非なるものとして終わる可能性もあります。
キケ・セティエン監督が就任しても、バルセロナっぽいサッカーをしてはいるものの、下部組織から一貫したカタルーニャ伝統のサッカーのスタイルとは、やはり別物となってしまうリスクがあります。
また、バルセロナがキケ・セティエン監督を起用した理由も、第一希望がシャビだったというのは、報道ですでに漏れていますし、方針があいまいです。
クーマン氏にも打診しており、キケ・セティエン氏はバルセロナにとって3番手かそれ以下の優先順位だったことになります。
第3希望を監督に据えるほどバルベルデ監督は悪い仕事をしていたようにみえません。
ポゼッションスタイルを守り抜いて欲しいのか?
とにかくカンテラーノ(下部組織出身)の登用が最優先なのか?
チャンピョンズリーグタイトルを獲りたいのかいまいち見えてきません。
そこら辺がきちんと定まってないままでは、、有能な監督を連れて来ようが、変化は望めないといえるでしょう。
[キケ・セティエン体制への希望]
キケ・セティエン監督は、バルセロナというチームが持っているアイデンティティーを取り戻すきっかけを作ることになるかもしれません。
かつての監督ヨハン・クライフは、存在そのものが、このチームのアイデンティティーの一つとなっています。
クライフの名言は、そのままバルセロナの根底にある強みを示しています。
キケ・セティエン監督も似たメンタリティーの持ち主で、勝っても内容が悪ければ満足しない理想主義者です。
就任してから初戦となったグラナダ戦では、ボール保持率は8割を超えています。
というわけで、キケ・セティエン監督の目指すサッカーとバルセロナのファンが待望するサッカーは、スタイルが近いのが希望といえるでしょう 。
[キケ・セティエン監督の不安要素は人身掌握]
選手が補強に対して口を出すようになり、ネイマール選手の獲得にピケ選手が動いていたことも報じられていますが、現在のバルセロナは中心選手が過度に力を持ちすぎてしまっています。
バルベルデ監督は選手の意向を汲みながらチーム内のバランスを取ることで、問題を解決しようとしていましたが、選手に遠慮していては、無難なサッカーに終始するしかありません。
セティエン監督はもう一度監督がチームのハンドルを握りなおす必要がありますが、選手たちがついてくるかどうかは、定かではありません。
というのも、会長選挙で来年に新しい会長が就任すると、キケ・セティエン監督は後ろ楯を失い、誰もが納得する結果と内容を出さないと交代することになります。
このようなチーム内にある政治的な動きまで下部組織出身の選手たちは読みきっているので、セティエン監督にどこまで忠誠を誓うのか?
という部分で不安はあります。
すでに新会長の就任に伴いシャビが監督に就任するという青写真を描いている人も多く、キケ・セティエン監督はシャビ監督までの繋ぎとも見てとれます。
そして、キケ・セティエン監督の側にも問題が散見されます。
スペインメディアのSPORTによるとキケ・セティエン監督の右腕エデル・サラビアコーチは、レアルマドリードとの試合中に計画通りに進まないチームに怒りを見せ、
苛立って指示を出していたと報じられています。
このような態度を右腕のコーチがしている限り選手から支持されるわけがないですし、ただでさえ選手の力が強い現在のバルセロナで受け入れられるのは難しいですね。
[最後に]
キケ・セティエン監督の手腕は前所属のベティスで証明済みえボール保持を軸としたサッカーを作り上げる手腕があるのは間違いありません。
しかしながら監督に就任したタイミングが悪いことと、バルセロナというチームが陥っている特有の問題を解決できるかどうかは、まったく別の問題となります。
また、ボール保持を軸としたサッカーは相手に守備の陣形を整える時間を与えてしまうので、ゴール前を守られながらも得点を決める武器が必要になります。
もっともオーソドックスなものが高さですが、スアレス選手、メッシ選手、グリーズマン選手、ファティ選手など前線の選手に高さはありません。
バルセロナはこのボールを持てば持つほどゴールが遠くなるという矛盾をメッシ選手の個人技で解決してきたチームなので、30歳を超えたメッシ選手の依存度を再び高めることになるでしょう。
このやり方は上手くいったとしてもメッシ選手の年齢を考えると持続可能なものではないので、どちらにしてもキケ・セティエン監督新体制のバルセロナには、あまり良い展望は見えてきません。