4か月ぶりに再開したJ1リーグでは、大きな問題も無く全9試合が行われています。今回は中断明けの全チームの状態をチェックしていきます。
第2節の対戦と結果
横浜FC vs 北海道コンサドーレ札幌
1-2札幌勝利
横浜FCは開幕の4バックから札幌対策で3-5-2に変更し、序盤から戦術的駆け引きで優位に立ちます。
北海道コンサドーレ札幌はいつもの3-4-2-1で今シーズンはハイプレス戦術に挑戦していますが、横浜FCはビルドアップ時にウイングバックが高い位置に張り出すため札幌のウイングバックはハイプレスに参加できず、前線の3枚のみがプレッシャーに走りますが、横浜FCはゴールキーパーを使い数的優位を利用してウイングバックが空けたスペースを活用しながら札幌のハイプレスを交わし、ボールポゼッションは57%を記録。また、札幌のジェイ対策として星キョーワンを起用して高さを防ぎます。
横浜FC下平監督に完璧に戦術的には看破された北海道コンサドーレ札幌ですが、ミシャ体制3年目の成熟度の高さと前線のチャナティップ、鈴木武蔵、ジェイの個人能力を活用。
ボールは保持されながらも決定機は作らせず、少ないチャンスをものにする割り切った戦い方に変更。
枠内シュートは札幌が3、横浜FCが2でスコアは2-1で札幌が勝利しました。
札幌は今シーズンのテーマであるハイプレス戦術は早々に諦めましたが、これまでのミシャ体制の継続性と前線の個人能力、コンビネーションはやはり大きな強みでチャナティップ-鈴木武蔵の連携で2得点。
横浜FCも安定したビルドアップで札幌を苦しめ、一美、斎藤光毅の東京オリンピック世代の2トップは脅威となっていました。
どちらも悪くないチーム状況といえます。
清水エスパルス vs 名古屋グランパス
1-2名古屋勝利
清水エスパルスは後方からのビルドアップと奪われた後の激しい寄せでボール保持率54%を記録するも、清水エスパルスの攻撃に慣れてきた名古屋グランパスが後半からサイドで主導権を握り返した展開です。スコアは1-2で名古屋グランパスが勝利。
清水エスパルスは新監督クラモフスキー氏がチーム作りの最中で、守備に生まれる脆さを名古屋グランパスがうまく突いた形ですが、前半名古屋グランパス相手に主導権を握れたことは清水エスパルスには自信になったでしょう。
名古屋グランパスは、フィッカデンティ監督にしては攻撃的なチーム作りをしているように見えますが、シンプルなサイド攻撃と阿部浩之のゲームメイク力がカギを握っておりチームとして攻撃面で強みは多くないですね。
清水エスパルスは新監督を迎えて今シーズンはチーム構築の時期として割り切るチャレンジをしていますが、名古屋グランパスが何を目指しているのかは見えてきません。
ガンバ大阪 vs セレッソ大阪
1-2セレッソ勝利
序盤から守備的なセレッソ大阪を崩しきれないガンバ大阪は56%とポゼッションで上回りながらも攻めあぐね、前半終了間際に左サイドから崩され奥埜博亮が先制。後半もガンバ大阪が攻撃的に試合を勧めますが、効果的なチャンスはセレッソ大阪が多く後半17分に丸橋祐介のミドルシュートが決まり、ガンバ大阪はPKで1点返すのが精いっぱい。枠内シュート3本で2得点したセレッソ大阪が効率的に勝利。
セレッソ大阪はこれで2連勝で3位につけています。
走行距離も2試合でJ1で10番目と省エネスタイルで勝つことができるので過密日程で安定した強さを発揮するかもしれません。
一方でガンバ大阪は、初戦こそ横浜Fマリノス対策が上手くハマり勝ち点3をゲットしましたが、ボールを持たされて対策を講じられると脆さをみせています。宇佐美ーアデミウソンの2トップは引かれた相手には良さが出ません。
大分トリニータ vs サガン鳥栖
2-0大分勝利
ゴールキーパーからビルドアップする大分トリニータの攻撃に対してサガン鳥栖のハイプレス守備とお互いの強みがぶつかり合ったゲームでは、大分トリニータのビルドアップが上回ります。2得点はゴールキーパー高木が起点となっており、前線からのプレッシャーを逆手にとって裏のスペースを活用したロングボールからでした。
サガン鳥栖は、ハイプレス戦術を採用するにはセンターバックのスピードが不足しているという弱点があり、そこを突かれてしまいました。また、4-3-3の3トップは先発のペレス、右ウイングのチアゴアウベスが機能しておらず、チアゴアウベスは中央にポジションを取り、ペレスは守備面でのハードワークをせず守備でスイッチを入れることができませんでした。途中出場の安庸佑、林大地を先発で起用したほうが良いでしょうね。20億円の赤字を抱えるサガン鳥栖が助っ人外国人補強を外しているのは厳しいですが、ユース出身の本田風智、松岡大起が躍動しているのは良い傾向です。
大分トリニータは戦術的には完成しているので新加入のフォワード知念慶が二桁得点して才能を開花させると上位争いに顔を出す可能性もあります。
浦和レッズ vs 横浜Fマリノス
0-0引き分け
68%と圧倒的にゲームを支配した昨シーズンの王者横浜Fマリノスですが、守備を固める浦和レッズを攻めあぐね、カウンターから多くのチャンスを作られてしまいます。
横浜Fマリノスは中断期間に獲得した小池龍太、天野純がいきなり先発。チアゴマルチンス、マルコスジュニオール、エジガルジュニオを温存し後半から投入するも得点までは至りませんでした。
リーグ1試合平均走行距離が1位の横浜Fマリノスは選手を入れ替えながらシーズンを乗り切るつもりでしょうが、横浜Fマリノス対策は各チーム進んでいますしベストメンバーが揃わない状況が続くと厳しいですね。
浦和レッズは4-4-2システムが徐々に浸透しボランチの柴戸海がボール奪取能力とスタミナで存在感を発揮しています。新加入のトーマスデンはセンターバックとして存在感を発揮しており昨シーズンからの積み上げを感じます。
ビッグセーブを連発した西川周作はビルドアップでも安定しており、空中戦で無類の強さを誇る橋岡大樹にロングフィードを何本も通しています。
柏レイソル vs FC東京
0-1FC東京勝利
柏レイソルはFC東京のハイプレスに苦しみ、後半からビルドアップを諦めロングボールをオルンガに集めますが唯一の決定機はオルンガがイージーなシュートをミス。枠内シュートはわずかに1に終わります。
FC東京は集中した守備で主導権を握りセットプレーで1得点をもぎ取り逃げ切り勝利。
FC東京の貫禄勝ちといった内容でしたが、田川亨介、ディエゴオリヴェイラが怪我で次節は厳しいでしょうし永井謙佑もまだ復帰しておらず、フォワードのやりくりはしばらく苦労しそうです。
柏レイソルもヒシャルジソンが退場で1試合出場停止。ビルドアップの練度がJ1ではまだまだですし、守備も固いわけではないのでオルンガが過密日程でコンディションを落とすと上位進出は厳しそうですね。
川崎フロンターレ vs 鹿島アントラーズ
2-1川崎勝利
川崎フロンターレは前半序盤で2得点、レアンドロ、ダミアンのオウンゴールが余計でしたが、前半は鹿島アントラーズを圧倒します。
後半は鹿島がレオシルバ、内田篤人のベテラン組を外して盛り返し、ルーキー染野がクロスバー直撃のボレーシュートを放つなどしましたがそのまま試合終了。
川崎フロンターレはシステムを4-3-3に変更しましたが、ポゼッションで安定感があり、被カウンター機会の減少につながった一方で4-4-2システムよりも中央での混とんが生まれにくくなり、偶発的なコンビネーションプレーの怖さも減っています。この攻撃の秩序と混沌のバランスを取るためには小林悠、中村憲剛が怪我から復帰するのを待つしかないかなと思います。
鹿島アントラーズはザーゴ新監督の戦術的な整備の真っ最中で攻守に無駄のない配置バランスを保てるようになり被カウンター機会が少なくなりましたが、川崎フロンターレと同じで混沌からの偶発的な攻撃パターンがなくなっています。
この2チームは自由と戦術のバランスという課題に向き合っているという意味で同じかなと思いますが、川崎フロンターレは戻る形があるのに対して鹿島アントラーズは土台から作り直しているので、失敗すると傷は大きくなりそうです。
湘南ベルマーレ vs ベガルタ仙台
0-1ベガルタ勝利
前半3分でジャーメイン良のセンタリングがそのまま入るラッキーな形で先制してそのまま逃げ切り勝ち。19歳のユース出身ゴールキーパー小畑裕馬が安定したプレーを見せて完封勝利を飾りました。
ベガルタ仙台は4-3-3システムで前線からプレスに行きますが自陣では4-4-2気味で守る布陣で、湘南のビルドアップを制限して引いてゴールを守る時は守るという割り切った試合運びで湘南の枠内シュートを2本に抑えています。
湘南ベルマーレは配置バランスが良くゴールキーパーからビルドアップしてボール保持しながら試合をコントロールするチームを目指していると思います。
前監督のチョウキジェ監督の運動量を前面に押し出したスタイルからバランスがよくなった印象です。
左ウイングバックの鈴木冬一のドリブルが試合を通じて脅威になっていて来シーズンは他のチームからオファーがくるかもしれません。
ただし、センターフォワードのタリクか指宿が得点を取れないと攻撃面での脅威は限定的です。
ヴィッセル神戸 vsサンフレッチェ広島
0-3サンフレッチェ広島が勝利
ヴィッセル神戸はフェルメーレンが不在でビルドアップはできても効果的な縦パスが入る回数は少なく、リーグ屈指の守備力を誇るサンフレッチェ広島相手にボール支配率66%を記録しますが無得点。
サンフレッチェ広島はサイドからボール前進してレアンドロペレイラをターゲットとした攻撃で3得点で快勝しています。
サンフレッチェ広島は開幕から2試合を2連勝で首位ですが走行距離は12位で省エネで体力を温存しながら勝ち切る強さを見せており優勝候補といっていいでしょう。
柏好文が怪我で離脱したのは痛いですが、交代で入った浅野雄也が3点目を記録しており、若手の台頭も力強いです。
ゴールキーパー大迫敬介は終始安定したプレーを見せて国内組の日本人ゴールキーパーでは現在ナンバーワンでしょう。
ヴィッセル神戸は酒井高徳が新型コロナウイルスに感染して1週間ほど練習が中止となったことが理由かわかりませんが、コンディションが悪く実戦モードに切り替わるまでには、まだ時間がかかりそうですし、キープレイヤーにベテランが多く、過密日程では厳しい部分があります。
さいごに
再開したJリーグでは無観客試合となりアウェーが6勝でホームが2勝とホームアドバンテージが薄まる現象が垣間見えます。しばらくは無観客が続き、8月から少しずつ動員しますが声を出しての応援は禁止されるので、ホーム、アウェーに関係なく勝つことができる安定したチームが強いでしょう。セレッソ大阪、サンフレッチェ広島は今シーズンに向いたチームといえると思います。
【速報】第3節の結果
7月8日(水)